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Colossus Studios

『ゼロ・グラビティ』メイキング参加レポート

『Autodesk University Japan 2014』2014.8.27
『ゼロ・グラビティ』メイキング参加レポート

ダイキンさんから招待状が来た時点で申し込みが締め切られていた、がAUTODESKに裏から(どこから?)手を回して申し込み登録を受け付けさせることに成功。
当セミナーはもはや満席でエントリーさえ出来なかったが、キャンセル待ちで粘り、当日無事に参加できました。
会場は超満員で、みなさん『ゼロ・グラビティ』のメイキングには関心が高いようです。
Autodesk University は建築・土木・製造業関係のセミナーも同時開催されているのですが、スーツ組みも多数参加していたようです。
会場では知った顔もちらほら見受けられました。

『ゼロ・グラビティ』(原題:Gravity)は、アルフォンソ・キュアロン監督による宇宙を舞台にしたSF・ヒューマン・サスペンス映画。
アカデミー賞において視覚効果賞をはじめとする7部門を受賞。
本編は詳細なプリビズやプリライトの綿密な計画を立ててから撮影を開始。
宇宙空間にいるような感覚をリアルに撮影するために、モーションコントロールロボットやLEDライトボックスなどの最新技術が開発されました。
本プレゼンテーションでは、「ゼロ・グラビティ」メイキングストーリーを新しい撮影技術開発のプロジェクトリーダーであるCGシーケンススーパーバイザー、Stuart Penn氏の視点からご説明いただきます。
Framestoreは1986年に設立されたイギリス・ロンドンにあるVFXスタジオです。
近年では2012年『タイタンの逆襲』『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』
2013年『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々/魔の海』『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』『ゼロ・グラビティ』『47RONIN』『LIFE!』
2014年『ロボコップ』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
等を手がけています。

http://youtu.be/OiTiKOy59o4

アルフォンソ監督はSF映画ではなく、宇宙ドキュメンタリーのような映画を作りたいとこの話を持ちかけてきたそうです。
この映像ができるかと問われた時、Framestoreとしては、「できる!しかし、我々はその手法をまだ知らない。だからこれから開発していく。」と答えたそうです。
実際彼らは、様々なテクノロジーを組み合わせて、今まで誰も到達したことの無いリアルな宇宙を描写することに成功しました。

http://youtu.be/ZV-UEca2W9U

プレビズに1年をかけたそうですが、最初から3D制作を計画していたようです。
しかし、最終的には2D撮影を3Dに変換する方式で対処しました。
理由としては3Dカメラが大きすぎ、ロボットアーム(後述)に取り付けて動かすことが出来なかったと言うことと、3Dカメラの大きさが実際の宇宙船ソユーズに入りきらなかったということだそうです。
しかし、CGは全て3Dでレンダリングされています。

CGレンダリングされた画像に実際の俳優の顔を合成するため、彼らは特殊な方法を開発しました。
まず、Mayaの中に3Dシーンを作り(例えば宇宙ステーションの内部)カメラアニメーション、ライティングを施した上で、
そのカメラアニメーションデータを使ってカメラを取り付けたロボットアームをコントロールし、3Dシーンと同じライティングで俳優を撮影するため、「サンドラの檻(Sandy’s Cage)」と呼ばれているLEDライトボックスいう特殊な照明装置を使ったのです。
外形は10x10mの箱ですが、200万個のライトをもつ巨大なLEDパネルが壁に備えられています。
LEDを使用することによって、通常のライトより柔軟な照明を施すことができました。
地球から反射する様々な色や、月光、日光、そして星の光らがすべて再生されました。
サンドラが箱の中央に縛り付けられ、カメラが彼女の周囲を動きまわり、彼女が動いているように錯覚させました。
カメラはどの角度からもズームイン、アウトしたり、彼女へ突進して顔の数センチ手前で急停止することができます。

このようにして、精確な照明と緻密なカメラコントールの計画を立てた上で撮影を開始したのです。
カメラのコントロールでは、最初Arri Alexaカメラに3Dリグを装着しての撮影をテストしましたが、大きさと重さのせいで、アルフォンソが望んだ素早く流れるような動きを達成できませんでした。
そこでサンフランシスコに拠点を置くBot Dolly社が参加することになりました。
Bot Dolly社のロボットアームは、物語で求められる狭い空間を動き、無重力感を与えることができました。
このIRISは、映画で求められた正確さと流動性、長さと強度を持っていました。そして2Dで撮影された25分間のフッテージは、Prime Focus Worldで3Dへ変換されました。

しかし、ロボットコントロールカメラやLEDライトボックスを使ってしても、撮影は重力に支配されている地球上で行わなければなりません。
当初、自由落下する飛行機の中で撮影できるかどうか試してみたそうですが、時間が短すぎて無理だと判断したそうです。
ミール宇宙ステーションの中でサンドラブロックが宇宙服を脱いでゆっくり回転するシーンがあります。
このシーンで、実際にサンドラブロックは何本ものワイヤーで宙吊りにされコントロールされているのですが、足をつるために太ももに巻かれたワイヤーハーネスが大きく、後で消すことができないため、サンドラの片足は全てCGの足に置き換えられたそうです(聞くまでは全くわかりませんでした)。
LEDライトボックス内で俳優を自由に回転させるための特殊な拘束装置(リグと呼んでいた)もMayaのアニメーションデータでコントロールされています。

ヘルメットの中だけ、実際に撮影された俳優と置き換えるため、撮影時のヘルメットはトラッキング専用の特殊なヘルメットで、頭に何本もの突起がある変な形をしたものをかぶっています。
撮影時のカメラだけでなく、リファレンス用に3台ものカメラで撮影を行い、それぞれにトラッキングデータを出すことで、より精度の高い合成が行えたそうです。

合成以外のシーンは全てMayaで作られ、アニメーションはモーションコントロールではなく手付けで(モーションコントロールは全て重力に支配されてしまうため)行われています。
宇宙服やパラシュートなどのクロスシミュレーションはMayaのnClothを使用。
パラシュートは非常に高解像度なシミュレーションで、2つのレイヤー構造を持ち、50万ポリゴン緻密さで、80本ものロープと繋がっています。
衝突による破壊シーンはMayaのBulletを使用。単純な破壊ではなく、力が加わって変形した後にバラバラになるというものだそうです。
また、宇宙ステーションでの炎の再現には苦労したようです。
なぜなら、宇宙の燃えている炎のリファレンスが無く、たった一つあったリファレンスもマッチが燃えているものだけだったようです。

そして重要なのは、ドキュメンタリーのようなリアリティーのあるCGを作り出すことです。
宇宙服やスペースシャトル、ハッブル宇宙望遠鏡、ミール国際宇宙ステーションの外観はよく知られているためです。
とくに国際宇宙ステーションは、内装が全てCGですが、驚くべきディテールになっています。
ライティングにおいても、実際には太陽の強い光と、地表から照り返されてくる反射光しかないので、物理的に精確な照明効果を得るために、レンダリングにはArnoldを選択したようです。
意外だったのは、プリビズではArnoldではなくMentalRayを使用しています。
メイキング映像をよく観ると、プレビズ段階の絵にGIフリッカリングが確認できます。
実際始めてArnoldを使用したのですが、それはとてもうまく機能し、非常に複雑なシーンでも、メモリー管理がうまく機能し、問題なくレンダリングできたそうです。

コンポジットの段階でもリアリティを追求するため、少し古めのカメラで撮影されたように見せかける必要がありました。
なぜなら、宇宙空間で運用されるカメラはどれもテストを受けて合格したもので無ければならないからです。
要するに少し古いということです。コンボルブやレンズの色収差などコンポジットで追加。
バイザーの傷、ヘルメットの中で見える白い息(コンポジターがガラスに息を吹きかけて撮影したとか)なども追加されました。